煌星
『緋色の欠片』主に真弘×珠紀や『薄桜鬼』など乙女ゲームを中心にした夢小説です。
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枯れない桜(薄桜鬼:土方×千鶴)

今回のお話しは、いつもコメントをいただく方からのリクエストによるお話です。
リクエストがあると書きやすかったりですが、なかなかドッキドキです(笑)

ではでは、始まります。






『枯れない桜』



新選組の居候となってから随分と月日が流れた。
出来るかぎり京の町を巡察する隊に交ざりながら歩いていた。
行方が知れない父を探すために、この地を訪れた夜。
衝撃的な出会いをした。
闇に浮かび上がる白銀の刀。
黒く長い髪を結い上げ、吸い込まれるように深い紫紺色の瞳。
鋭い瞳と肌に感じる強い殺気。

―あの時私は、目の前に阿修羅がいると思った。
あの時向けられた瞳は忘れられない。
今でも時折垣間見える瞳は、千鶴の胸に深く刻み付けた。

毎日巡察に同行することは出来ず、今日は本願寺境内―屯所内の掃除を手伝っていた。


「あぁ居た居た。雪村君、すまないんだが土方副長の所に、茶を二人分持って行ってくれないかね。」

縁側で袖に両手を入れ、優しい微笑みを向けている一人の隊士の姿があった。

「井上さん。お客様ですか?」
「客と言えば客だね。さぁ頼んだよ。存外彼は君の容れた茶を気に入っているようだからね。」

名ばかりの副長付き小姓。
それでも、今の私に出来ることを副長は私に与えてくれる。
男では無いけれど、正式な新選組隊士ではないけれど。
私を必要としてくれる。
此処に居ても良いのだと、思うことが出来る。


「副長、失礼します。お茶をお持ち致しました。」
「おう、入れ。」

すっ、と静かに横に開けると行商人姿の男が一人。
土方は相変わらず眉間に皺を寄せていた。
副長室に商人が居るというのはそうあることでは無い。
茶を零さないようゆっくりと二人の前に置き、立ち去ろうとした。
しかし行商人が広げている品に目がいくと、歩みを止めてしまった。

「どうした。」

顔をこちらに向けて首を傾げて千鶴を見遣る、紫紺の瞳。

「…副長。どなたか、いい人が出来たんですか?」
「何を言ってやがる。」

何をって―。
どう見ても、これは女物の簪にしか見えないのだが…。

「雪村君、気がつかなかったのか。」

聞き慣れた、それでも居ないと思われた人の声が聞こえ振り向くと、行商人の姿をした人物は観察方山崎烝であった。

「やっ山崎さん!?何故、簪を副長に見せているんですか!」
「別に副長に簪を売るつもりは無い。」
「千鶴…。」
「あっ…お仕事のお話……すっすいません!すぐに出ていきます。」

少し低くなった声に怯え、部屋を後にしようとする。

「はぁ…。まあいい、山崎そのまま引き続き頼む。」
「はい。」

頭を深く下げ、自分の仕事へ戻るため広げた簪を丁寧にしまい始める。

「あっ…。」

実はひっそりと簪を眺めていた千鶴は、一本の簪に目を止めていた。

「どうした。」
「いっいえ!では今度こそ失礼します!」

畳に頭を擦り付けるようにしながら部屋を退室する。

久しぶりに簪を見て楽しく思えた。
昔は江戸にいた頃、友人と見ては互いに見立て合い、いつか好いた人から送られたい。
そんな事を語り合っていた。

「好いた人かぁ…。」

見上げた空は青く白い雲が流れていく。

「きっと私は―。」
「千鶴。」

不意に呼ばれた名前。
恋をした事は無い。
友人達が話す言葉とは違うけれど
あの日から、自分の心を鷲掴みにして離さない。

「土方さん。どうかなさいましたか?」
「いや、たいした事じゃねぇ。」

眉間にはいつもの皺は無いけれど、どこか不機嫌とも取れるような表情をしている。

「またお前一人で掃除してやがったのか。
ったく、新八の奴サボってやがるな。」

隊士部屋の掃除は、各隊の隊士達が巡察ではない日に行われるのだが…
新八の隊はよく、サボって稽古へと繰り出し扱かれている。

「さっき山崎と会った事は忘れろ。
お前が会ったのは簪売りの行商人だ。」
「あっ…はい。」

隣に立ち下から見上げる副長の横顔は、凛としていて役者のように整った顔。
今はあの時とは違う、どこか優しい瞳が外を見つめている。

「お前も女だったんだよな。」

ふと零れた言葉なのか、まるでいつもは女と思っていないかのような言葉。

「えっと…それはどういう意味でしょうか。」
「ん?いや何でもねぇよ。
ほら、お前にやるよ。」

さも子供にお菓子を与えるかのように渡された物。

「ひっ土方さん!?」
「なかなかいい細工だったからな。
いつもお前はよく働いているが、給金が出るわけじゃねぇ。
だからじゃねぇが…受け取れ。」

手の平に収まる銀色の簪
先についた珊瑚で出来た桜の花が一輪

「こっ、こんな素敵な物いただけません!!」

土方副長なら、この簪が似合う女性がいるはずだ。
自分なんかじゃない。
綺麗な人が…

「一度受け取っちまったもんを返すんじゃねえよ。
恰好が悪いじゃねえか。
お前に買ったんだ、有り難く貰っておけ。」
「…ありがとう…ございます」

受け取った簪
これは夢ではないか
思わず頬を抓る

「おい…」
「あはは…どうも夢に思えてしまって…」
「はぁぁ…。んなことしてねぇで、ほら貸せ」

取り上げられた簪が
武骨で大きな手で優しく髪に飾られた。

「あぁ、よく似合う。」

いつも見せる鋭く強い瞳が
今は柔らかい優しく温かい瞳で千鶴を見つめている。
好いた人かどうかは分からない
ただ、今はこの人と時を共に出来れば良いと毎日思う。

「本当ならきちんとした女物の着物を着て、髪も結い上げて指した方が映えるんだろうが…」
「いえ…」

気恥ずかしい
それでも、込み上げてくるこの気持ちは押さえることが出来ない
だからと言って、伝える言葉とて浮かばない。

「一生の宝物です…」

俯き、反らした顔は赤く染まっているだろう
例え土方副長が自分を何とも思っていなくても
この思いだけは自分だけのもの

まだ―
花開く程ではなくとも
確かにつぼむ、この思い
いつかこの簪のように
咲くことを願う

「千鶴、いつか…」


―――


後書きデス
私、何を書きたかったの!?
申し訳ございません!!
折角リクエストをいただきましたのに(泣)
どうしてトッシーになると、こうも…こうもうまく動いてくれないとは!
彼は言い寄られ慣れすぎて、身近の人の淡い思いは絶対気付かない気がします。
そして、天然のタラシのような気がします。
もし、あんな激動の時代でなければ彼の生涯はかなり違うんだろうなぁ。
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